TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「え……?」

真正面で見ていたわたしは、その涙の意味が分からなくて首を傾げるばかりだった。
桧野はフリーズしてしまったようにその場から少しも動かない。
ただ涙がぼろぼろと零れているだけだった。

桧野はクラスで中心的な存在だった。
前向きな考えでクラスを明るくしてくれて、みんな彼のことを慕っていた。

だから驚いた。

「桧野……桧野、桧野」

何度も彼の名前を呼ぶけれど、彼の意識はこちらに向かない。
両手で自分の顔を覆いつくすと、ひどくか細い声で叫ぶのであった。

「怖いんだ……。誰にも必要にされていないと思うと。それって生きている意味がないってことだろ? 存在理由がないんだから……」

いつもなら考えられないような桧野の意外な一面。
わたしはどう対応していいか分からず、震える彼の背中をただ擦っていた。
わたしが舞香にやられて嬉しかったように、桧野もそう感じてくれえばいいと考えながら。
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