TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
ここまで我慢させてしまった。
こうやって爆発するまで蓄積させてしまった。
なんでわたしたちは気付いてあげられなかったのだろうか。

「ごめん、ごめんね、桧野……気付いてあげられなくて」

わたしはこの五日間で痩せこけてしまった体で、桧野を抱き締めた。
桧野は何も反応しなく、腕は体の両側でだらしくなくぶらさがっていた。

やるせない気持ちで、抱き締めながら再び桧野の背中をさすってあげる。

誰だって死は怖い。
だけど桧野は一度体験したことがあるので、その恐怖は格別なものだ。
だからみんなから必要とされない――存在理由がなくなることまでもが嫌なのだ。

わたしよりも可哀想な人。

わたしの胸の中で泣く桧野を見下ろして、ちょっとだけそう思った。
そうしてちょっと安心した。
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