TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「はあ? なに言ってるんだ、吉沢」

そしてとぼけた口調で返した。
その様子が癇に障ったのか、舞香は語尾を荒げる。

「わたしを殺せって言ってるの!」

いきなり剣幕になった舞香にさすがに驚いたらしく、桧野は体を縮ませた。
わたしはというと、その様子を指を咥えて見ていることしかできなかった。

「ちょっと待てよ、吉沢。なんで俺がお前を殺さなきゃいけないんだ」

まるで舞香をなだめるかのようななだらかな口調で、桧野が言う。
だけど舞香はその言葉を最後まで聞かず、昨日桧野がやったように鏡を割ってその破片を桧野に持たせようとした。

「これで殺せって言ってるの! 昨日みたいに、やってみてよ。わたし、怖くないから。死が唯一の解放だって分かっているから」

覚悟した瞳は鋭く、決心の強さを語っていた。
だからこそ桧野は動けなかった。
舞香が怯まない可能性の方が高いと察したからだ。
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