TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「もう……早くしてよ!」

微動だにしないわたしたちに痺れを切らしたのか、舞香がヒステリックな声を出した。

「ちょ、お前、落ち着けよ」

だけどわたしたちがそんな望みに応えてやれるわけがない。
桧野が差し出された破片を舞香のほうに押し返す。

「舞香、一体どうしちゃったの? 昨日まで普通だったのに」

そんなとき、ようやくわたしの体が自由になる。
強張っていた声帯が溶けたように緩み、やっと聞きたいことが聞けた。

だけどそんなわたしを舞香はすごい形相で睨みつけて。

「普通? 何それ。ここで普通の人なんていないよ。みんな狂ってる。異常なの。わたしも、もちろん更沙もね」

鋭い瞳でわたしを捉えると、尖った言葉でわたしを傷付ける。

「だから抜け出すの。もうこんな狂った場所にいるのは嫌だから。本当は更沙と一緒にいきたかったけど、更沙は嫌みたいだから、わたし独りでいく」

狂っている?
わたしも、舞香も?
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