TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
少し寂しげな眼差しで、舞香を見つめんながら。
さっきまで桧野も死んだ方が楽だとか言っていたけれど、今は立派に自分の意見を述べている。
やっぱり桧野は強いんだな、とぼんやり考えていると、桧野が再び口を開いた。
「まあ、俺はお前のこと殺すつもりないから。ていうかお前のこと殺す奴なんていなから。残念だったな」
そう言い終わると同時に、少しよろめきながらも立ち上がった。
そしてふらふらとどこに行くわけでもなく歩き始める。
わたしは遠ざかる桧野を止めるわけでもなく見つめていた。
だけど桧野の背を隠すように、異物が視界に混入した。
「……そんな物騒なもん、目の前に出さないでよね」
「これでわたしを殺して。桧野と違って、更沙はちゃんとやってくれるよね。ほら、はい、ちゃんと持って」
突きつけられたガラスの破片を嫌々受け取る。
鏡を割ったものなので、小さな破片にわたしの瞳が綺麗に映った。
虚ろで、ぼんやりとした、小さな黒い瞳。
久しぶりに見るやつれた自分の顔に驚きつつ、今度はその破片本体に焦点をあわせた。
鋭く尖っていて、強く握ったらこちらの手が切れてしまう。
こんなちっぽけなもので人を殺せるのは、少し呆気ない気がした。
わたしたちはこの破片より何倍も大きいのに、一刺しでわたしたちは死んでしまう。儚い命。
さっきまで桧野も死んだ方が楽だとか言っていたけれど、今は立派に自分の意見を述べている。
やっぱり桧野は強いんだな、とぼんやり考えていると、桧野が再び口を開いた。
「まあ、俺はお前のこと殺すつもりないから。ていうかお前のこと殺す奴なんていなから。残念だったな」
そう言い終わると同時に、少しよろめきながらも立ち上がった。
そしてふらふらとどこに行くわけでもなく歩き始める。
わたしは遠ざかる桧野を止めるわけでもなく見つめていた。
だけど桧野の背を隠すように、異物が視界に混入した。
「……そんな物騒なもん、目の前に出さないでよね」
「これでわたしを殺して。桧野と違って、更沙はちゃんとやってくれるよね。ほら、はい、ちゃんと持って」
突きつけられたガラスの破片を嫌々受け取る。
鏡を割ったものなので、小さな破片にわたしの瞳が綺麗に映った。
虚ろで、ぼんやりとした、小さな黒い瞳。
久しぶりに見るやつれた自分の顔に驚きつつ、今度はその破片本体に焦点をあわせた。
鋭く尖っていて、強く握ったらこちらの手が切れてしまう。
こんなちっぽけなもので人を殺せるのは、少し呆気ない気がした。
わたしたちはこの破片より何倍も大きいのに、一刺しでわたしたちは死んでしまう。儚い命。