TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「嫌だよ。桧野の言ったとおり、誰にも舞香は殺せない。クラスメートだもん。青春臭く言えば、掛け替えのない仲間?」

なぜかこの雰囲気からして、舞香は死なないんじゃないかと思った。
最初は狂ったように見えたけれど、会話をしているうちにまだ普通だということに気が付いた。
きっと舞香は投げやりになっているのだ。
全てが嫌になって、それなら死だけが救いだと、単純な思考を実行しただけだ。

それはわたしと同じ。
痛い現実を見れば、そんな意見はすぐに消え失せる。
それを分かっているから、わたしは少しおどけて答えてみせた。

「所詮クラスメートだよ。たかが他人の集まり。心まで許せない」
「そんな冷たく言っちゃって」
「本当だもん! 人間って裏表ある生き物なんだよ? 何を考えているかなんて、他人に分かるわけない!」

死ぬ話から少し路線がずれたことにほっとしながら、捲くし立てるように言ったせいか息切れをしている舞香をちらりと見た。

どうしようか。
何らかのアクションを起こさないと、舞香は死から離れられない。
かといって昨日の桧野のようなことを、わたしが舞香にできるわけない。

そんなことを考えていると、ふと良いともいえない微妙な案が浮かんできた。
少し危険だと思ったが、これはもう舞香を信じるしかない。

わたしは顔の前に人差し指を立てて、微笑みながら言った。

「そんなに他人が信用できないなら、自分でやれば?」

わたしの無茶な提案に、舞香の顔が凍りついた。
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