TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「た、ただ……痛いと思うと、なんかこうなっちゃうだけ」
「それって死ぬのが嫌だってことじゃないの?」

わたしの言葉に、舞香が勢いよくこちらを向き睨んでくる。

「ああもう、もどかしいな! わたしはこんなに死ぬことを望んでいるのに……なんで体が拒否するの!」

そして我慢の限界に達したのか、破片を床に思い切り投げつけた。
からん、と乾いた音がした。

「意味分かんない……。わたしは、わたしは……ただ解放を求めているだけなのに……」

そして肩を上げ下げして、震える声で小さく呟いた。

「わたしだってそうだよ。だけど死ぬことは間違ってる。少しだけ、この未来に期待してみようよ?」

わたしはそんな舞香を落ち着かせようと、肩に手を置こうとした。
だけど予想外にも、思い切り払われてしまった。

呆気にとられて舞香の顔をしばらく眺めていたけれど、やがて舞香は瞳からぼろぼろと涙を流し始めた。

「期待なんてここにはない……っ! わたしは、死を待つだけなんて嫌なんだよぉ……」

やがてはその場に崩れ落ち、子供のように喚き始めた。
その舞香の声は体育館に響いて、きっと杉村も聞いたであろう。
その証拠に、バラックの傍で次の犠牲者を選んでいた杉村の顔が少しだけにやけていた。
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