TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
わたしは体育座りをして、自分の足の間に顔を埋めた。
それは桧野、いや全てを拒否するという意味だった。

「柳川……」

だけど桧野は、小さくわたしの名前を呼ぶと、わたしの背中を擦ってきた。
ゆっくりと、優しく。
桧野の温度が伝わってくる。

やっぱり、あのときと同じ。

目尻が熱くなる。
舞香と桧野の行為が重なる。
だけどもう優しくしてくれた舞香はいない。

泣いちゃ駄目だ。
わたしには悲しくなる原因なんてないんだから。

零れそうな涙を、必死でおさえる。
だけどそんな無茶な行為、桧野にはとっくに気付かれていたらしい。

いつになく真剣な眼差しで、こちらを見てくる。
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