TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
やっと来た。
わたしの番が、やっと来た。

前よりは薄れたけれど確かにある死に対する恐怖と、やっとこの地獄から解放されるという安心。
二つの感情が反発しあい、動くのを躊躇わせた。

だけど杉村がわたしから目を離さないので、なんだか動かなくてはいけないような気がし、わたしは一歩踏み出した。

ぎし、と体育館の床がなる。
どきんどきんと心臓が高鳴っている。
手には汗を握っている。

大丈夫。
安心しろ。
ゆっくりと空気を吸うんだ。

明らかに動揺している自分を宥める。

楽になれる。
だからちっとも怖くない。

心の中ではそう思うものの、本能が死を拒否してしまう。
< 172 / 213 >

この作品をシェア

pagetop