TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
体育館の扉の前に来た途端、わたしの足が止まった。

一週間前、わたしは何も考えずにこの扉をくぐった。
そして中に入ってから、もう二度とこの外には出れないだろうと思った。
生きたいと願いながらも、生きて戻れることなど無理なことだと思っていたのだ。

だけど実際、わたしは今扉に手をかけている。
開ければわたしは自由だ。

わたしは、一人で帰っていいのだろうか。
この扉をくぐり、またあの幸せな生活に戻っていいのだろうか。

「柳川さん、早く」

杉村に急かされ、わたしは手に力を込めた。

開け放たれた扉。
久しぶりに見る校舎。

わたしはその場に座り込んだ。

懐かしくて、悲しくて。

力が入らない。
わたしは跪くような形で、その場に佇んだ。
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