TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「言いたいことがあって、来ました」

ぎゅ、と服の裾を握る。
なぜだかおばさんの顔を直視できなくて、わたしはじっとアスファルトと睨めっこしていた。

「わたし、舞香にすごくよくしてもらったんです。わたしがもう諦めかけたときも、たくさん励ましてくれました。大切なものを失って絶望していたときだって、慰めてくれた。わたし、舞香が大好きなんです。今も、これからも」

言葉が終わると同時にわたしは顔をあげ、頼りなくおばさんに微笑みかけた。
おばさんはわたしの捲くし立てる口調に圧倒されているのか、何も言わなかった。

そしてわたしは、再び口を開いた。
笑顔も作れず、俯いて。

「舞香を守れなくてごめんなさい」

深く、頭を下げる。

「舞香、言っていました。読みかけの漫画がある、新しいパソコンを買ってもらう、給料が出たらステーキを食べるんだって。舞香にはやりたいことがたくさんありました。それなのに、わたしなんかが……」

再び甦るあの感情。

なんでわたしだけ生きてるんだろう。
みんな死んでしまったのに。
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