TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
しばらく他愛ない話をしていると、一時間も経ってしまっていることに気付いた。
わたしは携帯で時間を確認すると、もう行かなくちゃとおばさんに伝えた。
これ以上遅くなると、叔母さんが心配するだろう。

「今日はありがとう。更沙ちゃん……だっけ」
「いえ、こちらこそ」
「これからも遊びに来てくれて構わないからね」

その笑い顔が舞香の笑い顔によく似ていた。
そう言うとおばさんが照れたようにそうかしらと言った。

わたしはおばさんに頭を下げて、家路を急ごうとした。
だけどすぐに何かを思い出して、わたしは一歩足を踏み込んだところで振り返った。

「あ、言い忘れていました」
「なあに?」

家の中に戻ろうとしていたおばさんが、こちらを振り向く。

「舞香を産んでくれて、ありがとうございました」

これが一番言いたかったのだ。
だっておばさんが舞香を生んでくれなくちゃ、舞香は存在しなかった。
きっとわたしはいつまでも独りぼっちだった。
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