TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「それじゃあ、失礼します」

そう言って足を進めようとした瞬間、わたしは吃驚して凍り付いてしまった。

ぼろり。
大粒の涙が、おばさんの目から零れる。
今まで我慢していたのだろうか。
拭っても、拭っても、涙は留めなく溢れていく。

「やだ、わたしったらみっともない……」
「あの、ハンカチ、どうぞ」

わたしはおばさんの元まで戻ると、ハンカチを差し出した。
おばさんは素直に受け取って、目元にやる。

「三年四組に編入するって聞いて、わたし、ものすごく舞香を責めたことがあったわ。だけどこんないいお友達が出来るなんて……思ってもいなくて」

おばさんが、ぽつりぽつりと語り始めた。

そりゃ不良クラスだと噂されているところに娘が入るなんて、誰だって嫌だろう。
責めない親がどこにいる?

「いい友達だなんて……ありがとうございます」

そうやってまたお礼を言う頃にはおばさんの涙はとまっていて。
再びあの笑顔が戻っていた。
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