TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「そうだよ。薬が人間にも効くならば、家に帰れる。だけどもしその薬が失敗作だったり、人間に効かなくて人間を拒否するものだったりしたら、どうなるだろうね」

その言葉にわたしはようやく杉村が何をするつもりなのか分かった。
危うく悲鳴を出しそうになったが、舞香がわたしの気持ちを察したのか優しく手を握ってくれた。
よく見れば周りの子たちも具合が悪そうに項垂れている。
それもそうだろう。こんなところに閉じ込められて、変な話をされれば、誰でも精神が壊れてしまう。

そんな中、桧野だけが元気に「分かりましたー」とのんきに言葉を返していた。
わたしはひやひやしながら、桧野を見ていた。
すると杉村の手が、ゆっくりと桧野の肩に近付いていくのを見た。

桧野がどうにかされてしまうなんて保証はどこにもないけれど、わたしはとにかく恐怖を感じた。
わたしは何も見たくないの一心で、目を瞑った。
すると真っ暗な世界に、大きな図太い声が響いた。

「ちょっと待て!」

びくりとして、恐る恐る声の聞こえた後ろの方を振り向く。
そこにはいつもの先生からは考えられないような怖い顔をした先生がいた。
興奮しているのか、鼻息が荒い。肩が苦しそうに上下していた。
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