TAKE MEDICINE　この世界で誰が正常でいられると？
「桧野に何をする気だ！　その手を離せ！　汚らわしい」

先生はまるで杉村を虫の存在のような扱いをしながら言った。
わたしはそれで杉村が怒ってしまわないかとびくびくしながら、杉村の様子を見ていた。
杉村はその声に従ったとは思わないが、ゆっくりと桧野の肩から手を離した。
その様子を先生が怪訝そうな顔をして見ていた。

「なんですか。そんなに大きな声を出して」
「物騒なことはすぐにやめるんだ。それにこれは犯罪だぞ。今すぐに生徒たちを家に帰してやってくれ。両親も心配しているはずだ」

先生は落ち着きを取り戻したのか、冷静な物腰でそう言った。
その際に桧野の近くまで歩み寄り、ぐいと桧野を自分の方に寄せた。
すると静まり返った体育館に、乾いた笑いと手の重なり合う音が響いた。

「さすが教師ですね。問題児を任されるだけの度胸がある。いやあ、素晴らしい」

高笑いをしながら、ぱちぱちと杉村が拍手をしていたのだ。
先生はその行動が信じられないというばかりに目を真ん丸くして杉村を見ていた。
そんな先生の様子に、満足したように杉村が微笑む。
< 34 / 213 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop