TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「物騒なこと? 犯罪? いいえ、違います。これは国の許可を得てやっているんですよ」

杉村はいやらしくにたりと笑った。

「信じられないという顔ですねぇ。でも本当なんですよ。あなたたちは世界のために動くのです。それはもう言葉では言い表せないくらいの幸せだとは思いませんか? あなたたちのおかげで、世界が救われるんです。これはいいことですよ。そんなに拒否することはないでしょう」

先生は顔色を失っていた。
ただ、告げられた事実に口をぱくぱくと無意味に動かしていた。
何か言いたいんだろう。嘘だ、と否定したいんだろう。

だけどもうそれさえもわたしたちはできないような状況だった。

「人間誰でも死ぬのです。ですから――」

体育館の入り口が開き、そこからスーツ集団がストレッチャーのようなものが運んできた
そのうえには医療器具のようなものがたくさん置いてある。

「――世界のために死ねるなんて、一番幸せな死に方だとは思いませんか?」

にやり。
それは不気味な笑い。
わたしたちを底なしの恐怖に突き落とす。
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