TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「そうですね。まず最初は一番面倒臭そうなあなたから行きますか」

杉村はそう言うと同時に、後ろの方で何かの準備をしているスーツ集団に目で何やら伝えていた。
わたしは先生に何かされちゃうんじゃないかと、怖くて震えていた。

するといきなり、スーツ集団の一人が先生の腕を捻り上げた。
そして二人がかりで先生を持ち上げ、ストレッチャーの上に乗せた。

瞬間の出来事だった。
わたしは瞬きすることなく、その場面を見ていた。
ぼうっと、何もすることができずに、目が次第に乾いていくのを感じながら見ていた。

「や……何をする! やめろ、触るな!」

先生は自分の危機を理解してか珍しく大きな声をあげた。
だけどそれなりの力で固定されているらしく、体格のいい先生がいくら身を捩っても余計な体力を使うだけだった。

するといつのまに持ってきたのか、スーツ集団がパーティションのようなものでわたしたちと先生のいる場所を隔てた。
完全にわたしたちの目に先生は映らなくなった。

わたしたちはただ呆然とその場に座り込んでいた。
何もできなく、ただのその光景を目の辺りにして震えていた。
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