TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
にやり、と力なく杉村が笑った。

「すみませんね。野宮先生に試した薬、生憎人間に適合しないものらしかったです」

あっさり、さっぱり。
杉村は表情を変えずにそう言った。

「実験用のモルモットでは成功したんですけどね。なぜ拒否を起こしたんでしょうかねぇ。実験は十分にやって確実なものとしたのに」

言い訳なのだろうか。
ぶつぶつと杉村が手につけていた手術手袋を外しながらそう呟いていた。

わたしはただ放心して、その様子を見ていた。

そのとき、後ろの方で誰かが立ち上がる気配がした。
わたしが振り向くよりも早く、その誰かは先生のもとへと駆けていった。

「ま、舞香!」

その誰かが舞香だと分かった瞬間、わたしも立ち上がり舞香を止めようと叫んだ。
だけど舞香はストレッチャーに凭れて、子供のように泣きじゃくっていた。

< 40 / 213 >

この作品をシェア

pagetop