TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
いつのまにか杉村はいなくなっていた。
少しだけ安心感を覚え、自然とわたしは微笑んでいた。
先生が死んだ。
目の前に突きつけられたむごい事実。
受け止めたくなくて、受け止めなくてはいけなくて。
わたしたちは無理やりその事実を飲み込んだけれど、今更になって気付かされる。
先生がわたしたちを支えてくれていたということを。
みんな放心してしまって、喋らずに、ラリってしまったよう。
そんなわたしたちを見た先生は、大きな声をあげて怒るだろう。
何をしているんだ。もっと前向きに考えろ。大丈夫だ、と。
だけどもう、そうやって叱ってくれる人はいない。
悲しくて仕方がなかった。
そして先生を助けられなかったという悔しさがあった。
だけどなぜか泣けなかった。
というよりも、わたしは泣きたくなかった。
わたしは感情を表わすということが最も苦手で、嫌いだったから。