TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「ということは、俺たちに何もせずに死ぬまで待てと?」

そんなとき輪の中から低い声が聞こえた。
それは安藤のものだった。クラスの中で一番低い声なのですぐに分かる。

安藤の言う通りだった。
わたしはそっとその意見に頷いてみせた。

「じゃあお前は、他に策があんのか? こっから抜け出せる自信があんのか? 抗ったら終わりだって、お前だって分かってんだろ!」

そんな安藤の意見に、桧野が声を荒げて即答する。

「もう一人死んでるんだ! 俺たちもそういう運命にあるんだ!」

誰かが叫ぶ。
もう無理だ。諦めよう。明るい未来なんて待ってない。

笑顔はすでに消えていた。
みんな絶望したような顔をしている。

そんなとき、その暗さを照らすような明るい声が後ろから聞こえた。

「だけどその薬が失敗作じゃなかったらわたしたち無事に家に帰れるよ。先生のは偶然失敗作だったんだよ。だからそんなネガティブな考え、やめようよ」

ああ、この呑気な声、能天気な考え。
振り向かずとも分かる。
舞香だ。
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