TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
だけどいくら舞香が懸命に言ったって、みんなの表情は少しも変わらない。
時間が経つたびに暗くなっているような気がする。

「……そんなこと言ったって、失敗する恐れがあるから実験してんだよ。あたしたちで」
「そうだよ。絶対にあの薬安心できない」
「先生の声聞いたでしょ? 苦しそうで、痛そうで……わたし、あんなの耐えられないよぉ……!」

静まり返った体育館。
嗚咽と溜め息の二重奏。

さっきまで盛んに動いていた桧野の口も、もう動かない。
みんな疲れて、悲しんでいて、死んだかのように動いていなかった。

そんな鬱な雰囲気の漂う中で、舞香だけが眠そうに目を擦っていた。

「更沙、眠い」

そして呑気なことにそんなことまで呟いている。
わたしは勝手に寝れば、と冷たくあしらい、溜め息をついた。

「なんでみんなそんなに冷たいの? もう少し前向きに考えればいいのに。更沙もそうだよ」

本気で不思議そうに首を傾げる舞香を、わたしは鼻で笑ってみせた。
舞香が不愉快そうにこちらを見てくる。
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