TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
有咲は本当? と困ったような、嬉しそうな、微妙な表情で訊いてきた。
わたしはこくりと頷き、有咲にもちろんと言おうと口を開いた。

そのとき、遠くから舞香の声がした。
それはわたしに向けられたものではない。
分かっていたけれど、反射的に振り向いてしまった。

そんなわたしを見ていた有咲が、かすかに顔を歪めた。

「ねえ、やっぱ吉沢さんのところ行きたいんじゃないの?」
「いいの。もう少し心の整理がついたら謝る予定だから」

わたしは舞香のことを振り払うかのようにぶんぶんと頭を振り、床をじっと見つめた。

試練だと思うんだ。
考えたくもないけれどもし舞香がわたしより先に実験台に選ばれたときのための。

そんなわたしを有咲は腕を組んだままの状態で見ていた。
まるでわたしを見透かしているかのようで、わたしは少し有咲の次の言葉に怯えていた。
だけど有咲はわたしの考えをことごとく裏切った。
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