TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
何かと思い視線を前に移すと、誰かがバラックに連れて行かれているのが見えた。
スーツの男二人に両腕を取られているにも関わらず、足をばたつかせて懸命に抵抗している。
その様子を楽しそうに見る杉村。

わたしの記憶が正しければ、今日二人目の犠牲者。
ということはあと二人か。

今はもうそんな姿を見て、涙が出てくることなんかなくなった。
冷静に直視できるようになったし、可哀想とも思わない。
だってわたしより死期が近かったというだけだもの。

わたしたちの寿命は、どう足掻こうがこの一週間で尽きるのだ。
一週間後には存在しない人間になっている。
そう考えるとものすごく怖いように思えるが、冷静に考えてみればそんなことはない。

杉村に次はお前だと指差されても、これは運命だから仕方ないとすぐに受け止められる気がする。
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