LAST EDEN‐楽園のこども‐
人間嫌いなのだろうか。


それとも、単に皮肉屋なだけなのだろうか。


判断に苦しむ佐伯は、だが、見逃さなかった。


歪んだ笑みをにじませた涼の瞳に、一瞬の隙をついて、一筋の孤独の光が浮かび上がって消えたのを。


「私は」


突破口を見つけたような気がして口を開きかけたその瞬間、涼は疲れたように佐伯を見ると、あのさ、と呟いた。


「何であたしに興味を持ったかなんて、知らないけど」


そして頬を歪めると、ふーっと大きく息を吐く。


「オチコボレに説教するなら、他の奴にしてくれよ。あたしはこれでも、結構ナイーブなたちなんだ」


「え、あの……」


けれど、それ以上彼の言葉が音を伝う猶予は与えられなかった。


言い捨てて、即座にスタスタと歩き去る涼の後ろ姿を見つめながら、佐伯は思う。


説教をするつもりではなかったと。


言葉の刃をまともにぶつけられて、それでも平気な顔で立っていられる涼の気持ちの一片を、知りたかっただけなのだと。


佐伯はついぞ口にできず、まっすぐに前を向いて歩く涼の後ろ姿を、ただ黙って見守っていたのだった。
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