LAST EDEN‐楽園のこども‐
縁に両足を乗せ、そう心の中で呟くと、ミウは曲げていた膝を静かに伸ばした。


そのとき彼らがその場に居合わせたのは、ミウを不憫に思った神からの贈り物だったのだろうか。


和樹、頼知、龍堂、真斗、佐伯、そして佐伯と同じテニス部の三神。


クラスメイトでもあり、全員が生徒会に所属する彼らが、練習の終わりに橋の向こうにできたファーストフードの店に寄ろうとしていたとき。


彼らは、ミウの只ならぬ行動を目にして、一斉に足を止めた。


「げっ」


初めに声をあげたのは真斗だ。


「わー、ちょっとちょっと!」


手足をバタバタと動かして慌てた真斗の体を押しのけると、龍堂は鋭い声で叫ぶ。


「行け、三神!」


名指しされた三神も、その他の人間も、「どうしてお前が行かないんだ」とは言わない。


抜群の瞬発力を誇る三神は、龍堂の言葉から0.05秒後には、縁に足をかけた少女めがけて飛び出していた。
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