LAST EDEN‐楽園のこども‐
「あのさ」


和樹は恐る恐る口を開いた。


「聞いてもいい?」


そして、ミウのそばにしゃがみ込むように腰を落とすと、気遣うようにミウを覗き込む。


「なんで、こんなこ」


「死にたかったのよ!」


突然叫ばれた和樹は、驚いた拍子に後ろに倒れそうになった。


噛み付くように叫び返したミウは、和樹を見た後三神に視線を移し、龍堂、真斗、佐伯、頼知を順々に見回す。


その瞳にキッと鋭い光を浮かべながら。


だが、憎むように眼差しに力を込めたミウは、突然肩を震わせると、弱々しく顔を背けて、ギュッと眉根を寄せた。


「なんで、邪魔するの」


ポタリ、と頬を伝う大粒の涼。


「どうして助けたりなんかするのよ」


瞳を覆う、激しい憎悪の微笑み。


「あたしは死にたいのに、どうして放っといてくれないの……っ」


死にたいと思うことは、生きていれば一度ぐらいは考えることもあるだろう。


しかし、実際それを実行する者は、考えた人間のうち半分もいない。


死んだ方がマシだとは思っても、それはまだ「マシだ」と思える状態だからである。


一歩一歩死への階段を上る途中で、誰かの優しさに救われることもあれば、自分の中に新たな希望が芽生えることもある。


絶望から立ち直り、生への気力を取り戻す何かがあるからこそ、人は足を踏みとどめられるのだ。


だが、目の前の少女の場合はどうだろう。


彼女にはきっと、何もなかったのだ。


足を踏みとどめる何かもないままに追いつめられ、苦しんで、その上での決断なのだ。
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