LAST EDEN‐楽園のこども‐
涼は、問題児だった。


教師のいうことは聞かない、校則は守らない。


そんな、校内きっての問題児のことは、和樹も当然知っていた。


というより、いまどき品行方正、文武両道を教育理念に掲げ、明日の紳士淑女を育む青蘭では、涼の名前を知らない人間の方が少ない。


「いーから行けよ、話しかけんな!」


思春期の少年独特の刺々しさか、それとも、素行不良と名高い涼に対する嫌悪感からなのか。


乱雑な物言いで言い捨てると、彼はきっぱり涼から顔を背けた。


その横顔に、関わり合いになりたくないという強い意思を浮かべて。


だが、涼は言い返さない。


その代わり、相変わらず見えない表情を浮かべたまま、すっと腕を伸ばして、自分の傘を和樹の頭の上にさしかけてやった。
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