LAST EDEN‐楽園のこども‐
「よくわかんねーけど」


バトンタッチされた頼知も、ミウを見下ろして、困ったように口を開く。


そして頼知は、その瞬間目を見開いて息を呑んだ周りのメンバーをよそに、うずくまったままのミウの体を抱き寄せて、その背中にゆっくり腕を回した。


「どうせなら、男の胸で泣けよ。声を殺して泣くなんて、寂しすぎるっつーの」


おいおい頼知、と誰もが口には出さないが、心の中で溜息をつく。


「誰も抱きしめろとは言ってないのですが」


佐伯の小声に、隣で和樹が口元を緩ませた。


「まぁまぁ、頼知だからな」


戸惑ったのは、ミウ本人も同じことであった。


いきなり抱きしめられた彼女は、驚きのあまり一瞬涙が止まる。


しかし。


「吐き出しちまえよ」


耳元で囁く頼知の声が、人の温もりに激しく飢えていたミウの心に、あまりにもストレートに響いて。


「急がなくても、いつかは死ぬんだ。焦ることねぇよ」


そう言って、ミウの背中を撫でる指が、ひどく優しかったから。


「ふっ、ふ……っ」


再び零れ落ちる涙に、ミウは自分の顔を頼知のシャツに押し付けた。


「かわいそうに」


頼知は、小さな子供をあやすようにミウの頭を撫でた。
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