LAST EDEN‐楽園のこども‐
「辛かったよな」
頼知の瞳の奥に、強い怒りの色が浮かび上がる。
追いつめた人間たちに対する苛立ちを含んだように、鋭く尖る。
それから彼は再び視線を下げると、聞いている者の心に深くしみいるような声で、優しく囁いた。
「お前は悪くねーよ」
泣き声が、一際大きさを増す。
それは、ミウがずっと誰かに言って欲しかった言葉だった。
悪くない。
自分は悪くない。
何度呪文のように唱えただろう。
朝、教室の扉の前で、何度誰かが自分を助けてくれる夢を思い描いただろう。
誰にも届かなかった苦しさは、涙の涼に形を変えて、今やっとミウの心を自由にしたのである。
その様子を少し後ろで眺めながら、龍堂は考えていた。
和樹や他の人間が思っているとおり、彼自身は弱さや甘えを一切許さない鉄の男である。
だがしかし、傷ついた人間を突き放すことは、さすがの彼でもできない。
意外なことだが、むしろミウのそばに行って慰めてやりたいほどである。
それをしないのは、ひとえに他の人間の前であるということと、あまりにも無骨すぎてソフトな言い回しができないことを彼自身が自覚していたからだ。
無神経な言葉を吐けば、防御壁を失ったミウの精神は、すべて吸収してしまうだろう。
龍堂は、それが何よりも怖かった。
だからこそ戸惑い、無力な自分に口惜しさをかみ締めていた彼は、ふと視線を背けた瞬間に目に飛び込んできた光景に、息を呑む。
なんだ、あれは。
龍堂は瞬きをして目を凝らす。
そして、それが見知った人間であることを確かめると、苦々しげに頬を歪めた。
頼知の瞳の奥に、強い怒りの色が浮かび上がる。
追いつめた人間たちに対する苛立ちを含んだように、鋭く尖る。
それから彼は再び視線を下げると、聞いている者の心に深くしみいるような声で、優しく囁いた。
「お前は悪くねーよ」
泣き声が、一際大きさを増す。
それは、ミウがずっと誰かに言って欲しかった言葉だった。
悪くない。
自分は悪くない。
何度呪文のように唱えただろう。
朝、教室の扉の前で、何度誰かが自分を助けてくれる夢を思い描いただろう。
誰にも届かなかった苦しさは、涙の涼に形を変えて、今やっとミウの心を自由にしたのである。
その様子を少し後ろで眺めながら、龍堂は考えていた。
和樹や他の人間が思っているとおり、彼自身は弱さや甘えを一切許さない鉄の男である。
だがしかし、傷ついた人間を突き放すことは、さすがの彼でもできない。
意外なことだが、むしろミウのそばに行って慰めてやりたいほどである。
それをしないのは、ひとえに他の人間の前であるということと、あまりにも無骨すぎてソフトな言い回しができないことを彼自身が自覚していたからだ。
無神経な言葉を吐けば、防御壁を失ったミウの精神は、すべて吸収してしまうだろう。
龍堂は、それが何よりも怖かった。
だからこそ戸惑い、無力な自分に口惜しさをかみ締めていた彼は、ふと視線を背けた瞬間に目に飛び込んできた光景に、息を呑む。
なんだ、あれは。
龍堂は瞬きをして目を凝らす。
そして、それが見知った人間であることを確かめると、苦々しげに頬を歪めた。