LAST EDEN‐楽園のこども‐
また、あの小娘か。


その顔は、よくもまぁこんなときに遭遇するものだと言いたげである。


それは恐らく、彼女にとっても同様に違いないのだが。


一向に泣き止む気配の見えないミウに、龍堂は意を決したように口を開いた。


「泣くな」


「おい龍堂、やめ」


弾けるように身を乗り出した三神を制止するように手を挙げると、龍堂は深く重みのある声で、龍堂らしからぬ穏やかな口調で言う。


「お前が知らぬだけで、同じように憂えている者はいる」


心なしか、その表情はひどく憂鬱そうである。


ミウが肩越しに振り返ったのを確認すると、彼は挙げていた右手を高架下へと伸ばし、指を差した。


「あそこにも、お前のように闘っている人間はいる」


その太い指は、まさにミウが飛び降りようとしていた先へと伸びている。


「何だ?」


「見ればわかる」


そして、河川敷を覗いた彼らは、そこで目にした光景に声を上げた。
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