LAST EDEN‐楽園のこども‐
すっげー。


一番乗りで到着した真斗は、肌で感じる人間たちの闘志に、目を丸くしてその場に立ち尽くしていた。


目を輝かせて眺めるその姿は、格闘技に熱中する少年の、熱い興奮の眼差しによく似ている。


かと思えば、少女たちがバキッ、ドカッ、と生々しい音を立てて地面に倒れていく瞬間には、目をむいて顔を背ける。


うわー、イタそー。


真斗が逃げたくなるのも無理はない。


激しい暴力シーンに心が沸きながら、実際それを近くで感じれば、普通はその痛みと恐怖に身が萎縮する。


強い力に憧れを抱く人間は多いが、普通の生活を送る中で、そんな力を必要とする機会はあまりない。


だから真斗は、人工的ではない呻き声が入り乱れた乱闘シーンに、血の気が引くぐらい青ざめていたのであった。


真斗が息を呑んで立ち尽くしているとも知らず、涼と那智は向かってくる相手を軽やかな動きでなぎ倒すと、見事な連携で無駄のない動きを繰り返す。


強い。


見るからに長身であり、喧嘩慣れしていそうな那智が強いのはわかる。真斗が驚いたのは、涼のことであった。


150センチあるかないかぐらいの小柄な涼が、次々と自分より大柄な相手を倒していく姿は、まさに圧巻。
< 119 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop