LAST EDEN‐楽園のこども‐
残りのメンバーがその場に駆けつける頃には、相手の少女たちは那智と涼の前にねじ伏せられ、地面に無様に転がっていた。


立ち上がる余力もないほどに思われた彼女たちだったが、集団で登場した彼らを援軍だと思ったのか、顔面を蒼白にするやいなや、一斉に逃げ出していく。


覚えてろ、という捨てゼリフを、和樹はドラマ以外で始めて聞いたと思った。


「お前の出番はなかったな」



頼知が真斗の肩にポンと手を置く。


「きょうび、女が逞しいのは仕方のないことだ。恥じる必要はないぜ」


慰めにならないセリフを言うと、頼知はそれから苦しそうに肩で呼吸する涼と那智に視線を送った。


青蘭中の制服を着た少女の方が、幼馴染であり、問題児として名高い雨宮涼であることは間違いない。


しかし、隣にいる他校の少女の名前までは、思い当たる節がない。


「知り合いか?」


頼知に訪ねられた真斗は、どこかで見たことはあるが思い出せずにいた那智の顔をマジマジと見つめると、ハッとしたように素っ頓狂な大声を上げた。


「あー!」


そして無謀にも指を差すと、見るからに嬉々とした笑顔を浮かべて叫ぶ。


「渋谷のヤンキー!」


「……殺していいか」


一瞬の間を置いて涼を振り返る。


だが、那智の声で彼らの存在に気づいた涼は、こめかみをピクッと震わせて物も言わずに回れ右をしてみせる。
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