LAST EDEN‐楽園のこども‐
「おい待てこら」


「止めんなタコ」


「いや、ふざけなさいよマジで」


しっかりと腕を掴んで離さない那智を観念したように見て、勘弁してくれと言いたげに首を横に振った。


「あたしゃ苦手なんだよ、しゅーだんこーどーってやつが。知ってんだろ」


「あたしだって、あんな躾のよさそーなお坊ちゃんたちは苦手だ」


それに、と那智は視線を促すと、汚れた制服姿のミウを見て、うーんと唸るように声を出した。


「あいつ、なに?」


「あいつ?」


眉間にしわを寄せて顔を上げる。


「何の話……」


そして涼は目を見開いた。


強張った表情を浮かべる彼女の瞳に映ったものは、少年たちの後ろで怯えているミウの姿だった。


ボロボロの制服を身に纏い、頬に幾筋もの涙の跡をつけたミウの、悲しみに打ちひしがれた姿なのであった。
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