LAST EDEN‐楽園のこども‐
間近にいた頼知には、那智の幾重にも巻かれた複雑な想いが、ありありと見て取れる。


けれど、他の人間の目には、冷たい口調で突き放すような態度の涼と那智の姿が、思いやりのかけらもない人間として映っていたのである。


「悪いがあたしは、そんなのに巻き込まれてるほど暇じゃねぇ」


まったく興味がないといったように掌をヒラヒラと振った涼に、一人の少年が我慢ならないといったように噛み付いた。


「そんな言い方するなよ」


和樹だった。


和樹は、顔面を蒼白にしたミウの肩を強く抱き寄せると、少年らしい瑞々しさに溢れた瞳に、強い非難の光を浮かび上がらせる。


「誰も巻き込もうなんて思ってねーよ。理解できなくても別にいいさ。理解しろなんて、言うつもりもない。だけど、そんな言い方するな。確かにお前には関係ないだろうけど、だからってわざわざ傷つけるような言い方しなくたっていいだろ」


「またお前か」


涼は、和樹の顔を見てからかうように笑う。


「お前は、落ちてりゃ人間だって拾うんだな」


「―――――っ」


ミウが身を萎縮させて息を呑む。


その胸の内を悟った和樹は、無神経な言葉を咎めるように叫んだ。
< 127 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop