LAST EDEN‐楽園のこども‐
「雨宮っ!!」


射るように見据えた大きな瞳を、強い怒りが色濃く彩る。


そして和樹は、凛とした声で言い放った。


「俺のことはどう言われたって別にいい。好きなだけ馬鹿にして、好きなだけ笑えよ。だけどな、傷ついてる奴を見て、お前は何も感じねーのかよ。どうでもいいって笑えるほど、お前は冷たい人間なのかよ!?」


弾けるように叫んだ後、和樹は見据える瞳を若干和らげる。


そうじゃないだろう。


まるで、そう問いかけているようだった。


「強い奴はいいよ。手を貸さなくても一人で立てる奴だったら、お前の言ってることだって間違っちゃいねーよ。だけど、誰だってあるんじゃねーのかよ。一人じゃ立てないときだって、人間だったらあるはずなんじゃねーのかよ。お前にだって、そういうときがあったはずだろう!?」


一人で生きられるほど強い人間ばかりじゃない。


だから、逃げてもいいのだ。


誰かの温もりにすがることは、許されているのだ。


そう言われているような気がして、涼は胸の奥が熱くなる。


和樹の無骨な優しさが素直に響いて、何だか無性に泣きたいような気持ちになる。


涼はチラッと視線を流してミウを見た。


怯えたように俯く彼女は、涼の視線には気づいていないようだ。


細めた瞳に遠くを見透かすような眼差しを浮かべると、涼は胸の中で呟いた。


いいな、あんたは。


こんな風に言ってくれるお人好しがいてさ。
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