LAST EDEN‐楽園のこども‐
和樹は自問自答する。


どうやら、思っていたよりも悪い人間ではなさそうだ。


それは、この短いやりとりでも、十分に感じていた。


けれど、これまでに抱いてきた印象というものは、そう容易く払拭できるものでもない。


特に、思春期の、まっすぐにしか物事を考えられない年頃にとって、涼の行動は和樹の胸中に混乱の嵐を呼び起こそうとしていた。


しかし。


「悪い、サンキュー」


単細胞で単純。


仲間には、和樹のことをそう表現する者もいる。


けれど、自分の落ち度を認めて素直に謝罪の言葉を口にできる潔さが、和樹が人好きする理由でもある。


というより、普段の彼を知っている人間からすれば、こうも嫌悪感をむき出しにしている姿は、逆に想像がつかないことなのかもしれない。
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