LAST EDEN‐楽園のこども‐
「相手になるな」


涼の肩に、那智がグイッと腕を回す。


「お前はこいつらとは違う。言ったってわかるはずがない」


だが、耳打ちするように囁かれた言葉は、呆気なく耳の間を通り過ぎる。


「知るかよ」


涼は那智の腕を振り切るように払うと、つまらなさそうに笑って言った。


「お前がどういう了見なのかは知らないが、それを他人に押し付けるんじゃねぇ。奉仕活動もご立派だけどな、どさくさ紛れに人の心の中までのぞきこむような真似はやめてくれ。他人に踏み込まれて我慢できるほど人生諦めてるわけでもないし、他人が救い上げてくれるのを期待するほど卑怯なわけでもない」


「雨宮っ!!」


和樹は再び声を荒げた。


そして口惜しそうに唇をかみ締めると、一呼吸してやるせない笑みを浮かべる。胸の中で、あの日の雨が激しく打ち付けていた。


「本当はオレ、あの時から、お前に対する見方が変わった気がしてた。人より言葉が足りないだけで、本当はすごくいい奴なんじゃないかって。よくわからねーけど、とりあえずみんなが噂するような奴じゃないって、そう思ってた。だけど……」


そこで間を置くと、伏せた長い睫を上げて、低い声できっぱりと言い捨てた。


「見損なった。やっぱり最低だよ、お前」
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