LAST EDEN‐楽園のこども‐
和樹は、どうして自分がここまで口惜しいのかわからない。


わからないが、まるで裏切られたかのような後味の悪さを感じている。


それは、捨て猫のために傘を差しかけてくれた涼の優しさが、本物だったと信じていたからかもしれなかった。


自分は濡れながらも、寒さに震える仔猫のために傘を差し出したあのときの涼が、本当の彼女なのだと。


それなのに、それが自分の勘違いに過ぎなかったと気づかされた和樹は、信じたかった気持ちも手伝って、余計に腹が立つのである。


「お前なんか、いなくなっちまえよ」


消え入りそうな声で言う。


「お前なんか、そうやってずっと一人でいればいいんだ」


ひどい言葉を言われたのは涼の方なのに、なぜだか和樹の方が傷ついているように見えた。


「先輩、そりゃないっすよ!」


涼に好意を寄せている真斗が叫ぶ。


「和樹、それは言いすぎ……」


そして、三神もなだめる様にそばに駆け寄ったそのとき。
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