LAST EDEN‐楽園のこども‐
「さっき、怒鳴ってごめん」


申し訳無さそうに俯いた和樹に興味なさそうに、涼はポツリと訊ねた。


「そいつ、飼うの」


 訊ねられて、和樹は口ごもる。


「いや、それは」


 すると、涼にすかさず切り返された。


「じゃあ置いて行くってこと?」


結果的にはそういうことになる。だが、実際に言葉にされると、現実味が増した。


和樹は、自分がひどく残酷なことをしようとしている気にさせられた。


「……」


言葉をつまらせて腕の中の仔猫をギュッと抱きしめると、失笑交じりの皮肉気な声が耳に容赦なく忍び込んできて、和樹の罪悪感に拍車をかけた。


「呆れた」


涼が自分を軽蔑する理由は、頭では理解できる。


だが、はいそうですと納得できるほど、和樹も大人ではない。


だから、反射的に涼をギロッと睨んだ。


確かにその通りだが、そんなことは他人に指摘されるでもなくわかっている。


何より、お前には言われたくない。


友達でもなければ、問題児として教師たちを困らせているような人間に、他人の行動を咎める権利があるとでも思っているのか。


そう、言い返してやるつもりで。


だが次の瞬間、和樹は、そのまま時間が止まってしまったかのように、涼を見つめていた。

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