LAST EDEN‐楽園のこども‐
とても、目を離すことができなかった。


涼の、嘲りもからかいの色も映さず、ただジッとこちらを見つめている双眸。

静寂をたたえたそれは、何故だかとても悲しそうで、吸い込まれていきそうな気がした。


責めている?


いや、そうではない。


彼女は別に自分を非難するつもりではないのだ。では、何を言おうとしているのだろう。


深い湖の底を思わせるような瞳に宿っている悲しげな光は、一体……。


「気を悪くさせたみたいだね」


「雨宮、オレ……」


「でも、飼ってやれないのに、簡単に優しくするのは、卑怯だと思うから」


その声には、まるで喉から絞り出したように辛そうな響きがある。


胸をつかれた和樹の前で、涼は呟くように小さな声で言った。


「最後まで責任見てやれないなら、立ち止まっちゃいけないんだ」


そのとき自分の胸に込みあがってきた感情を、和樹はうまく説明することができない。
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