LAST EDEN‐楽園のこども‐

小休止

ただでさえ気温も低い中、靴下の中までぐっしょりと濡れそぼった体で帰宅した和樹は、不幸にもというか当然というか、その日の夜はしっかりと風邪を引いて熱を出した。



「だからすぐお風呂に入りなさいって言ったのに。びしょびしょで帰ってきたかと思えば、口もきかずに部屋の前で突っ立ってるんだもの。何かあったんじゃないかって、おばさんすごく心配してたわよ」



「うるせーなぁ」


「あ、何よその言い方。あんたの帰りを待ってた優しい幼馴染に対して、罪悪感ってものはないわけ?」


「あ? お前、今なんつった」


優しい、のところに妙なアクセントを付けた美織を見上げて、和樹は実に嫌そうな顔で答える。


「大体、幼馴染だからって勝手に部屋の中まで入ってくるなよ。男の部屋だぞ、一応」


「はいはい、ご心配ありがとう。でも、あんたなんか頼まれたって問題外だから。しかも、熱出して歩くのもふらふらの病人に言われたって、説得力も何もないわよバカ」
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