LAST EDEN‐楽園のこども‐
「なにそれ。どういう意味? 馬鹿にしてんの?」


「まさか。ぜんぜん」


そう言いながら、口元を押さえて笑いをこらえているのは明らかである。


「あっそう。もういい。おっさんなんかには二度と頼まねーよ」


そして、涼はガタッと音を立てて乱暴に立ち上がった。


「ああ、待てって。おい、涼!」


「なに?」


ぶっきらぼうに涼が振り返る。


義人は、そんな涼を笑いを含んだ笑みで見つめた。


「猫のエサなら、裏の路地を左に曲がった角にトリマーの店があるから、そこ行きな。この時間なら、まだ開いてっから」


「……はじめっからそう言えよ」


ったく、からかいやがって。


そう言い捨てて、涼は店から出て行く。


その後ろ姿を、義人は楽しそうに見送る。


「猫ねぇ……」


そう呟いて、義人はタバコを口にくわえた。


「いい傾向じゃねーの」
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