LAST EDEN‐楽園のこども‐
「帰るとこだったんだろ?」


コクリと頷いた涼に、それなら、と言って、頼知は腕を差し出す。


「かしてみ」


「……いい」


「なんで。駅まで持ってやるだけだって」


「いいって」


「なに遠慮してんだよ。他人行儀なんて仲じゃ……」


そこまで言って、頼知は、ハッとした。


「あたしは、要らないって言ってるんだ」


凛とした声で、突き放すように吐かれたその言葉は、はっきりとした拒絶を頼知に突きつけた。


しばらくの沈黙。


向き合う頼知の顔には、もはや笑みは浮かんでいなかった。
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