LAST EDEN‐楽園のこども‐
頼知は、英語でも聞いているのかと思った。


それは、大切な思い出だと思っていた友人の口から出る言葉とは、とうてい思いたくなかった。


同じ学校であっても、コースが違えば、校舎が違う。


そうなると、違うコースの人間と知り合う機会はめったにない。


それでも、コースの垣根を越えて、涼の噂は頼知の耳をかすめた。


不登校、校則違反、喧嘩、万引き、援助交際その他もろもろ。


そんな噂が耳に届くたび、退屈しのぎに涼の名前を口にする人間を、頼知は苦虫を噛み潰したような顔で見つめていた。


根も葉もない噂を信じるような軽率さを心の底から軽蔑していたし、他人のことで騒げる人間たちを、低脳でどうしようもないと思っていた。
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