LAST EDEN‐楽園のこども‐
「ぴぎぃ」


暗く鬱積した気分を払うように頭を振りかぶると、その振動で起こされた仔猫が、膝の上で小さく不満の声を上げた。


「ごめん」


撫でてやると、猫は再び心地よさそうな眠りへと沈んでいく。


「そうだ。お前の名前がいるよな」


少し考えてみる。


その結果、涼の頭に浮かんだのは、シンプルすぎるほどシンプルな名前だった。


「白い猫だから、シロ。今日からお前はシロだ。わかったな」


我ながら、安易なネーミングでだとは思う。


だが。


「マリーって顔でもないしな」


皮肉気に笑って、それから涼は力なく呟いた。


「いいな、お前は。しがらみなんて一つもなくて。ただ生きるだけだもんな」


小さな肉球を触ると、シロはくすぐったそうに手を丸めた。


「なんで生まれてきたんだとか、何のために生きるかなんて、お前にはくだらねぇよな。そんなの、何の意味も持たないってこと、お前は知ってるもんな」
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