LAST EDEN‐楽園のこども‐
ひた向きに生きるということにおいて、野に生きる獣に勝ることはない。


腹を満たし、温かい寝床を確保すること、そして種の保存だけが彼らの唯一の生きる目的であり、すべてである。


命に意味など求めれば生存競争の中で取り残され、その先にあるのは、死しかない。


そして、自ら死を選ぶような動物は、人間以外にはいないのだ。


懸命に生きるということを迷い立ち止まる動物は、人間だけなのだ。


「大きくなれよ」


そうして涼は、シロと名づけた仔猫をそっと膝から下ろした。


ソファの革のヒヤッとした感触に、仔猫は一瞬顔を上げたが、すぐにまた心地よい眠りへと落ちていく。


忘れかけていたその穏やかな空気に、まるで泣くように笑う少女は、一瞬の安堵を見出すのだった。
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