LAST EDEN‐楽園のこども‐
「あー、やっぱいいや、勘違いだったみたいだわ」


和樹は片手をヒョイッと上げると、肩をすくめて苦笑いを浮かべた。


「悪い、寝てるとこ邪魔して」


そしてそそくさと立ち去る和樹が、何かを隠しているらしいということは明白だったが、必要以上に深読みしない頼知は、不思議そうに首を傾げて呟くだけである。


「はぁ?」


何しに来たんだとは思ったが、敢えて呼び止めるほどの関心もない。


再び一人の時間を取り戻した頼知は、もう一度机に顔を伏せて、大きな背中を丸めた。


彼もまた、昨日のことを思い返していたのである。


中学進級と同時にコースの別れた涼と頼知が顔を合わす機会など、めったにない。


あっても、体育祭や創立祭などという大きな学校行事のさなかに、チラッと姿を見かける程度である。


それも、決まって一人でいる涼の姿を。
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