LAST EDEN‐楽園のこども‐
何を持って生きる術だと言っているのかは知らないが、そこまで信念を持って毛嫌いするのであれば、いくら友人であっても強制はできない。


勿論、那智自身もそれが詭弁であることは承知の上である。


勝手なへ理屈で、自分以外の人間に通用するとも思っていない。


だからこそ彼女は、本来ならば龍堂の顔面に拳をお見舞いしてやりたいのを、必死で堪えているのである。


「あんたがどんだけお偉いのか知らないさ。そんなことは、土俵の違うあたしらには関係ない。だけど、てめーが何でも正しいなんて思ってると、そのうち足元掬われるってことだけは、覚えといた方がいいぜ」


暗く深い声は、健全な世界にいる龍堂には馴染みが浅い。


目を見開いて驚きを露にする龍堂から視線を外して、他人事のように涼しげな顔をして眺めている涼をチラッと一瞥すると、案の定涼はニヤニヤと目を細めている。
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