LAST EDEN‐楽園のこども‐
変わらず不躾な視線を送る龍堂に、やがて涼が静かに唇を動かす。


「あんた、顔を洗うのに、いちいち誰かの了解とらないだろう?」


「何の話をしている?」


戸惑ったような表情を浮かべる龍堂は、脈絡のない話の意図が、まったくわからなかった。


「当たり前のことをするのに、他人の了解なんて必要ないだろ」


「それとこれとは話が」


「同じことさ」


涼は、龍堂の語尾を打ち消すように、そこに自身の言葉を重ねた。


「寂しけりゃ、温もりを求めて誰かの腕にすがる。気が合えば、ダチになる。当然の成り行きだ」


それは、恐らく誰しもが本能的に持っている自己防衛手段のうちの一つ。


他人の温もりにすがらないでは生きていけない、人間本来の弱さとも言うべきものだろう。


しかし。
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