LAST EDEN‐楽園のこども‐
「愚かな」


やはり嘲笑するように唇だけで笑うと、龍堂はあからさまに侮蔑の念を込めた表情で、誇り高き皇帝に相応しい言葉を吐いた。


「互いに己を高めあい、尊敬を抱き合える人間でなければ、友人には値しない。お前の言う友人とは、単に時間を共有するだけの、はしかに過ぎない」


龍堂の申し分を聞いて、涼は思う。


それが分からない理屈なのは、あんたが幸せなガキだからだ、と。


何の痛みも知らない人間に、かさぶたの歯がゆさをかみ締めている人間の理屈など通用するはずも無いことを、涼は痛いぐらいに知っている。


だから涼はわずかに笑みを浮かべて見せた。


別にいいぜ、と。


「理解なんて、初めから期待しちゃいない」


諦めの言葉を口にするその頬には、パッと見では気づかないぐらい、小さな笑みが浮かんでいる。


「どこか欠けた奴らが、それを埋めるために集まる。寂しさを紛らわすために、肩を寄せ合う。たとえばそれは、あんたの言うとおり、傷の舐めあいかもしれないし、時間潰しに一緒にいるだけかもしれない。でもな」


そこでいったん言葉を切ると、それから涼はゆっくりと見据えるように龍堂を見つめた。


「何が必要で、何が余計かなんて、簡単にわかるかよ」
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